アウトドア用品市場の本命は? ポストキャンプブーム時代の注目銘柄5選

近年のアウトドアブームは落ち着きつつありますが、キャンプや登山、ハイキングといったアクティビティは、多くの人々にとってライフスタイルの一部として定着しています。関連するギアやアパレルへの関心も、ブーム期ほどの過熱感はないものの、根強いものがあります。
このように市場環境が変化する中、アウトドア用品の企画、製造、販売を手がける企業の動向は引き続き注目されています。
世界的に有名なブランドをライセンス展開する企業から、独自のプライベートブランドで熱心なファンを獲得する専門店。
ほかにも全国的なネットワークを持つ大手小売、体験型店舗で新たな価値を提案する企業、そして異業種から参入し市場に変化をもたらした企業まで、各社が独自の戦略を展開しています。
本記事では、成熟期を迎えつつあるアウトドア市場において、独自の戦略で存在感を示す注目企業をピックアップ。それぞれの企業が持つ魅力と、変化する市場環境に対応するビジネスモデルに迫ります。
株式会社ゴールドウインは、日本のスポーツ・アウトドアアパレル市場において、その高い技術力と強力なブランドポートフォリオを武器に、リーディングカンパニーとしての地位を確立しています。
同社のアウトドア事業の成功は、世界的に著名なライセンスブランド「THE NORTH FACE」、「HELLY HANSEN」と、自社オリジナルブランド「Goldwin」の巧みな展開によって支えられています。
特に「THE NORTH FACE」は、日本のアウトドア市場およびファッションシーンにおいて絶大な人気と影響力を誇ります。
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テントや寝袋といった本格的なギアから、ダウンパーカ、シェルジャケットなどの高機能アパレルなど、テクノロジーとデザイン性を融合させた幅広い製品ラインナップが、多くの消費者を魅了し続けています。
また、「HELLY HANSEN」は、セーリングで培った防水技術を核に、海から山までの多様なアクティビティに対応する高機能ウェアを提供し、特定分野で強い支持を得ています。
強力なライセンスブランドに加え、自社ブランド「Goldwin」も存在感を高めています。スキーウェア開発で培った技術力を基盤に、ミニマルなデザインと合理性・快適性を追求したアウトドアウェアを展開し、近年は海外市場への展開も加速させています。
同社の研究開発拠点「ゴールドウイン テック・ラボ」を中心とした高い技術開発力によって、これらブランド製品の品質と機能性を支えています。
ゴールドウィンの業績やその背景については「ザ・ノース・フェイスの成功で収益性向上。今後は自社ブランド「ゴールドウィン」で海外での成長を目指す」で詳しく解説しています。
株式会社カンセキが運営する「WILD-1」は、単なるアウトドア用品の販売にとどまらず、「アウトドアライフストア」として独自の価値を提供する専門店です。
そのコンセプトは、高品質な製品(ツール)の提供に加え、専門知識を持つスタッフによる情報発信、そして自然への敬意を育むモラルの向上を重視している点にあります。
このアプローチにより、WILD-1は単なる小売店を超え、アウトドア愛好家が集うコミュニティ拠点としての役割を担っています。
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WILD-1の最大の競争優位性は、「tent-Mark DESIGNS」のようなプライベートブランドにあります。日本の気候やユーザーの声を反映した独創的かつ実用的な製品開発で知られ、時に専門家とのコラボレーションも行いながら、熱心なファンを獲得しています。
強力なPBは、大手ナショナルブランドとは異なる独自の魅力を放ち、WILD-1の個性を際立たせています。また、店舗スタッフ自身がアウトドア経験豊富であり、実践に基づいた深い知識とアドバイスを提供できる点も、顧客からの信頼を得る大きな要因です。
大手量販店の規模や低価格戦略とは異なる土俵で、専門性とコミュニティ形成を武器に独自のポジションを築いています。
カンセキの詳しい解説記事はこちら「アウトドア店「ワイルドワン」が好調!栃木拠点のホームセンター「カンセキ」」
ゼビオホールディングス株式会社は、日本のスポーツ小売業界においてシェア2位を誇る企業グループです。その広範な事業ポートフォリオの中で、総合スポーツ専門店とアウトドア専門業態の両輪で多様な顧客ニーズに応えています。
アウトドア戦略の中核を担うのが、専門業態「L-Breath(エルブレス)」です。L-Breathは、キャンプ用品や登山・山岳用品に特化し、単なる道具の販売に留まらず、「人」「生活」「自然」との豊かな触れ合いをサポートするウェアやギアを提供することをコンセプトとしています。
都市部の旗艦店などを中心に、専門性の高い品揃えと知識豊富なスタッフによる接客を通じて、コアなアウトドア愛好家からの支持を集めています。
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一方で、全国に多数展開する大型総合スポーツ専門店「スーパースポーツゼビオ」においても、アウトドア用品コーナーを設け、幅広い品揃えを提供しています。
これにより、様々なスポーツを楽しむ顧客が、アウトドア用品にも気軽に触れられる機会を創出し、ワンストップショッピングの利便性を高めています。
また、オンラインストアと全国の店舗網を活用した店舗受け取りサービスなど、デジタルとリアルを融合させた取り組みも進めています。
近年のアウトドア市場では、キャンプブームが一巡し、関連用品の需要が落ち着く傾向が見られます。ゼビオホールディングスのアウトドア部門もこの市場環境の影響を受けていますが、業界最大手としての規模と多様な店舗フォーマット、そして専門業態であるL-Breathの存在は、変化する市場環境に対応していく上での大きな強みとなります。
株式会社アルペンは、日本のスポーツ小売業界を牽引する大手企業であり、近年アウトドア分野においてもその存在感を急速に高めています。同社のアウトドア戦略の核となるのは、専門業態である「アルペンアウトドアーズ」および「アルペンマウンテンズ」と、プライベートブランド「TIGORA(ティゴラ)」のアウトドア関連製品です。
「アルペンアウトドアーズ」は、"体験型"をコンセプトに掲げた大型のアウトドア専門店です。広大な売場には数多くのテントが実際に設営され、顧客はサイズ感や使い勝手をリアルに確認できます。また、専門知識を持つスタッフによるアドバイスや、定期的に開催されるワークショップ・イベントを通じて、単なる商品購入以上の価値を提供し、顧客エンゲージメントを高めています。
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「アルペンマウンテンズ」は登山やスキーといった山岳スポーツに特化し、より専門的な品揃えを実現しています。
PBの「TIGORA」は、アウトドアウェア、トレッキングシューズ、関連小物など、多岐にわたる製品を展開しています。機能性とデザイン性を両立させながらも手頃な価格設定を実現しており、特にコストパフォーマンスを重視する層から高い支持を得ています。このPB戦略は、主要ナショナルブランド製品を補完し、幅広い顧客層へのアピールを可能にすると同時に、事業全体の収益性向上にも貢献しています。
ワークマンは、作業服市場で培った圧倒的なノウハウを武器に、アウトドア用品市場へ参入し、大きなインパクトを与えている企業です。
同社の強みは、プロの職人が求める過酷な環境基準を満たす「高機能」な製品を、独自のPB戦略と効率的なビジネスモデルによって「低価格」で提供できる点にあります。この「高機能×低価格」という方程式をアウトドア分野に応用し、市場に新風を吹き込みました。
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主力PBである「FieldCore」は、作業服由来の耐久性や撥水性、防虫性といった機能をアウトドアデザインに落とし込み、「AEGIS」は高い防水透湿性を手頃な価格で実現するなど、本格的な機能性を求めるユーザーから、気軽にアウトドアを楽しみたいエントリー層まで幅広い支持を集めています。
これらの製品は、主に「ワークマンプラス」業態を通じて展開され、従来の作業服店のイメージを覆し、新たな顧客層の獲得に成功しました。
近年では、テントやキャンプギア製品にも参入し、その圧倒的な価格競争力で話題を呼びましたが、アウトドアブームが一巡した現在は、市場環境の変化に合わせた戦略調整が求められています。
大手スポーツ小売チェーンや高価格帯のアウトドア専門ブランドとは一線を画し、ワークマンは機能性を重視する価格コンシャスな層や、アウトドア初心者にとって魅力的な選択肢を提供することで独自のポジションを確立しました。
ワークマンの業績好調・次の戦略について土屋哲雄専務への独自インタビューを行った記事はこちら「ワークマン土屋哲雄専務インタビュー「第2のデータ経営で世界トップ10へ」」